コミケを風疹から守り隊

2014年11月19日水曜日

消費税増税論者の嘘を撃つ

初回公開日:2014年11月19日
最終更新日:2014年11月19日


1.はじめに
(タイトルは、ぶっちゃけ言えば煽りです)

安倍首相は、2014年7~9月期のGDPが事前予想を遥かに下回りマイナス成長に転落した事実を受け、消費税増税の延期と解散総選挙を決断しました。これに対してマスコミ・野党・有識者の間に「増税延期はアベノミクスの失敗を意味する」だの「財政健全化の道が遠のき将来世代にツケを回す行為だ」などといった意見がみられます。

しかし、これらは全て嘘です。
こうした嘘を吹聴する人達は、教科書レベルのマクロ経済学の基礎すら理解していない愚か者(あるいは騙されている可哀想な人)か、さもなければ私利私欲の為にはどれほど国民が苦しもうが死のうが知った事ではないと思っている極悪人のどちらかです。
そこで今回は、それらが嘘である理由を、なるべく端的に述べたいと思います。

また、念の為に書いておきますが、私は政治的にはむしろ安倍政権に批判的ですが、それはあくまで是々非々であり、少なくとも現状の金融政策に関しては、それが正しい政策であるが故に支持しています。但し増税には明確に反対です。その点に関しては、以下で繰り返し述べます。
また、これらの事は以前の記事「経済メモ:景気・金融・財政などの話(アベノミクスで景気は回復するか?)」の中にも書きましたので、宜しければそちらも御覧ください。



2.「消費税増税はアベノミクスの一部である」の嘘

こういう嘘を言う人はまず間違いなく「アベノミクスとは何なのか」を理解していません。解らないものに対して「アベノミクス」と名前を付ける事で解った様な気になっているだけです。
改めて言うならば、アベノミクスとは「デフレから脱却し経済成長を軌道に乗せる為の一連の政策群」の事です。
そもそも消費税増税は、民主党野田政権の時に、自民・公明・民主の3党合意に基づいて決められた事ですから、その成り立ちからしてアベノミクスとは全く無関係です。そればかりか「デフレ脱却・経済成長」というアベノミクスの目的からは全く逆行するものでしかありません。
何故なら「デフレ脱却・経済成長」とは即ち、景気回復を意味するからです。景気刺激の代表的政策とは金融緩和と財政出動の2つです。金融緩和は既に効果を上げ始めていたのに、財政出動とは正反対の効果を持つ増税を強行してしまった為に、回復しかかった景気に冷水を浴びせてしまったのです。
これはマクロ経済学の基礎知識(の1つ)ですが、たとえそうした知識が無くても、せっかく良くなりそうだった景気が、消費税増税後に酷く悪化したと実感している人はいらっしゃるのではないでしょうか。

という訳で、繰り返しますが、増税はアベノミクスの一部などではありません。むしろ真逆です。
勿論私は安倍首相に責任なしとはしません。真に安倍首相が責められるべきは、むしろアベノミクスではなく、経済学の鉄則に逆らって8%への増税を決断した行為、そして(延期したとは言え)景気条項を削除して将来の増税を確定させた行為そのものなのです。


3.「増税延期はアベノミクスの失敗」の嘘

前項で述べた通り、アベノミクスとは「デフレ脱却と持続的な経済成長」を目指す一連の政策の事です。従って、アベノミクスへの批判には、目的に対する批判と方法論に対する批判の2種類があり得ます。
目的に対する批判の代表は「デフレ脱却や経済成長など不可能」というものです。これが嘘である事はすぐに解ります。何故なら、この20年、先進国中でほぼ日本だけがデフレに苦しみ最低の経済成長レベルであり続けてきたからです。これは紛れも無く政策の失敗によるものです。
また、方法論を批判するのであれば、アベノミクス全体ではなく個別の政策に関して言及すべきです。それをしないのは能力が足りないか、あるいは誤魔化そうとしているのか、のどちらかでしょう。

増税を延期せざるを得なくなったのは、十分に経済を成長させられなかったアベノミクスの失敗だ」などと言いたがる人は、経済成長は増税の為にあるとでも思っているのでしょうか。そうであるならば、それはまさしく増税原理主義とでも呼ぶべき、歪み切った思想です。
この、増税原理主義の誤りについては、次項で改めて述べます。


4.「消費税増税は財政を健全化させ将来世代にツケを回さない為」の嘘

これは本当に酷い嘘です。何故なら、これが人々の良心に訴える嘘だからです。「子や孫世代の為」という、誰もが反対し難い大義名分を押し立てて負担増を強いているからです。
しかし、それはインチキなのです。その証拠は幾つもありますので以下に列挙します。

 1)増税を繰り返しても税収は増えていない。
消費税が導入され、2度にわたって税率が上げられましたが、税収は増えていません。これには2つの理由があり、1つはバーターで減税が行われた事、もう1つはGDPが伸びていない事です。バーター減税に関しては税収内訳の変化を見れば解りますが、消費税は増えていますが所得税と法人税の減少がそれを打ち消しています。本体であれば税とは「多く持っている人や法人から多く頂く」べきものですが、貧乏人からも否応無しに徴収する消費税が増えている一方で、政治力を持っている大企業や大金持ちから取る税金は減り続けています。「取り易い所から取っている」と言うしかない状況です。
より重要な要因としてGDPが伸びない点(=低成長)があります。経済が成長すれば増税などしなくても税収は自然に伸びます。景気が回復すれば金回りも良くなり雇用が改善し税収も増える、良い事づくめです。だからこそ日本以外の多くの先進国は安定した経済成長を政策目標にしているのです。即ち、

 2)増税しなくても税収は増やせる。
という事です。ではここで、2013年度税収について財務省の見積もりと実際の税収とを比較してみましょう。
2013年1月時の財務省見積もり:43兆1000億円
2013年6月(補正予算編成時)の見積もり:45兆4000億円
2014年7月決算概要:46兆9529億円
何と、当初の見積もりより3兆8000億円以上も上回っています。補正予算編成時に上方修正した見積もりと比べてさえ、なお1兆5000億円以上も上回っているのです。これこそ、金融緩和の成果と言う他はありません。今後も安定した経済成長を続けていけば、それだけ税収も増え続けます。勿論、この税収増は財政健全化にも寄与していたのです。なのに、あぁそれなのに、

 3)増税すればむしろ財政は悪化する。
冒頭にお示しした通り、消費税増税後に景気は急速に悪化し、GDPは何とマイナス成長に陥ってしまいました。当然税収は減り、2014年度は当初の見積もりを大幅に下回る可能性が高くなりました。減らさない様にする為に更に増税をするとでも言うのでしょうか。もしそうなれば更に景気は悪化し税収は減り…まさに悪循環です。
安易な増税はむしろ財政を悪化させると理解すべきです。

 4)いわゆる「国の借金(政府債務)」は明治以来数百万倍に増加している。
勿論物価上昇による影響は大きいですが、その点を考慮してもなお、少なくとも数千倍に増加しています。しかし勿論、財政破綻など起こりませんでした。
最近「国の借金が一千兆円を越えた」のが、何か一大事であるかの様に報道されましたが、それのどこが問題なのか、キチンと説明してくれる人は誰も居ませんでした。ただ「財政破綻の危機」とか言って脅すだけです。
国の借金が財政破綻に結び付き難い理由は大きく3つあります。1つは経済規模そのものが拡大している事。その意味でも持続的な経済成長は必須であり、成長を阻害する勢力こそが財政破綻を招いているとも言えるのです。2つめは借金の殆どが円建てであり為替の影響を受けない事、そして3つめは、「国の借金」の最大の貸し手が(間接的ではありますが)我々国民自身である事です。


5.「増税を延期すれば国債の信認が失われ売り浴びせられ金利が急上昇」の嘘

もぅいい加減に馬鹿馬鹿しくて真面目に書くのも嫌になってきますが、それでもこんな世迷い事を真面目くさって言う人が居る以上、ツッコミは入れておかなくてはなりません。大体、増税延期で金利が急上昇するかどうか、現実を見れば解る筈なので、それで終わりにしても良いくらいです。
ただ、念の為に言っておきますと、景気が回復すれば金利は上昇し国債価格は低下します。これはセオリー通りの動きです。そうした当たり前の変化をあげつらって「国債が売られてる!ハイパーインフレの始まりだ!」とか騒ぐ人が居るかもしれませんが、はっきり言ってそんなのはペテン師です。あるいは「量」や「程度」という概念を理解出来ない人です。


6.まとめ

現在の日本は景気が悪く経済成長が阻害されている状態が続いています。ですから景気を回復させ持続的な経済成長の軌道に乗せる必要があります。その為に役に立つ政策なら支持し、害になる政策は批判します。それが私の基本的なスタンスです。
その意味では、安倍政権の経済政策のうち最大の功績は金融緩和であり、最悪の愚策は消費税増税(8%への増税実施と景気条項を削除し将来の10%増税を確定させた事の両方)です。
これほど明白に「安倍政権最大の弱点」がアカラサマになっているのに、その点を指摘・反省・攻撃するマスコミや野党は(皆無とは言わないまでも)殆ど無いのが現状です。しつこい様ですが、これは「教科書レベルのマクロ経済学の知識」があれば理解出来る事です。

念の為に申し上げておきますと、勿論私だって「経済的な豊かさはあらゆる社会問題を解決する」などという極論を述べるつもりはありません。しかし少なくとも「経済的な貧しさによって極めて多くの社会問題が引き起こされる」という点に関しては、議論の余地も無く明らかであると考えています。
言い換えれば、確かに「お金では買えない幸せがある」のは事実でしょう。しかしそれ以上に「お金が足りなくて起きる不幸は沢山ある」のが、紛れもない事実なのです。
そこから目をそらしてはいけないと、そう私は考えています。


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