なぜ鏡では左右が反転すると思うのか？

初回公開日：2012年04月21日
最終更新日：2012年04月21日


１．はじめに

こちらのTogetter「鏡で反転するのはなぜ左右なのか」が大変な人気になっています。ただ、色々な意見が出ていて、ちょっと混乱気味の様です。実は私も御多分に漏れず、この問題に関しては少々真面目に考えてみた事があります。そこで、この機会にちょっとまとめて書いてみます。

最初に、私が出した結論を書きます。
1)鏡で反転するのは左右ではなく、鏡の面に直行する座標軸である。
2)それを「左右の反転」と思ってしまうのは、認識の問題。
3)もっとはっきり言えば、我々の体が左右対称かつ前後も上下も非対称だから。
つまり、上記のTogetterで言うと、念波(nennpa)さんの意見に一番近いです。

２．鏡で反転するのは、鏡面に直行する座標軸である



Togetterの中にも「床に鏡を置いてその上に立ったら」という例えで気付いた方が何人かいらっしゃいましたが「スカートの中が気になって考えられない」という（想像力豊かな）コメントもありました（笑）。
だからという訳でもありませんが、私自身が経験したのは、ホテルのエレベーターに乗った時、天井が鏡張りになっているのを見た時です。これならスカートの中も気になりませんし、反転しているのは上下であって、前後も左右も反転していないと気付き易いかと思います。
あ、念の為書いておきますが、普通のビジネスホテルですよ。それほど高級なホテルでもないし、ラブホテルでもありません（爆）。

つまり、頭の上や足の下に鏡があった場合は、反転するのは上下軸のみであり、前後や左右は反転しません。それは、鏡の中の像を、どちらにも回転させない様に注意して取り出して、実像と並べてみれば解ります（勿論、現実には取り出すのは不可能ですが、頭の中でやってみるのですよ）。
そして、自分の前後に鏡があった場合には、実は、反転しているのは前後軸なのです。これも、回転しない様に注意して鏡から鏡像を取り出してみれば解ります。
更に言えば、左右軸が反転するのは自分の左右に鏡があった場合であり、この場合は前後も上下も反転しません。

この事を実感する為には、一旦自分自身を鏡の視野から外して、無機物のみを鏡の前に置いてみるのが良いかもしれません。
そうですね、例えば六面それぞれを全て異なる色に塗り分けたサイコロ立方体などを置いてみたらどうでしょうか。そのうえで、立方体を固定して鏡の方をあちこちに配置してみれば「鏡像とは鏡の面に垂直な軸で反転するものである」事を実感しやすいでしょう。

３．では何故「左右が反転している」と思ってしまうのか

私達が鏡の向こうに居る人を「左右反転した人」と思うのは、鏡像を「こっちを向いている人」だと思うからですね。実際には前後反転した像であるのに、それを前後反転と思わずに「こっちを向いている」と認識してしまうのは何故でしょうか。
それは、我々の体が左右対称であって上下前後に非対称だからだと考えます。もっと言えば、鏡だという事を知らずに鏡像を見た場合に、こちらを向いている人が居ると認識してしまうのは、我々の体が上下前後に非対称であって左右対称だからです。

納得しましたか？しませんよね、普通は（笑）
何故なら、我々の脳がその様に認識する、というのは言わば本能だからです。鳥が巨大な目玉を見れば怖れる様に、顔があればこちらを向いている人だと認識するのが自然であり、その認識から逃れるのは、なかなか困難です。

では、その本能から少しでも、離れる為に、ちょっと思考実験をしてみましょう。

４．とある思考実験の宇宙人（またはモビルスーツ）

前項で述べた思考実験の具体的な内容は「もしも我々の体が左右非対称で、かつ、上下もしくは前後が対称だったら？」というものです。とりあえず上下対称は想像が難しそうなので「前後対称で左右非対称」な体を考えて見ましょう。
人間の体としては考え難いですが、宇宙人か何かなら可能でしょう。例えば体の右側に口が開いており、左側に鼻があり、前と後ろに目が一つずつで頭に毛が１本も無く、前後対称なラッパ状の耳が左右に1つずつ、そんな感じの知的生命体を想像してみましょう。もし、自分がその生き物の立場だったとしたら・・・
うぅ、何だか書いてて気持ち悪くなってきました。この思考実験は却下です。

そこで（サブタイトルに書いた「モビルスーツ」と「前後対称」のキーワードでお気付きの方もいらっしゃるとは思いますが）ガンダムです。そう、ガンダムには前後対称のモビルスーツが存在します。ジオン公国軍の水陸両用重モビルスーツ「ゾック」です。しかしながら、このゾック、前後対称なだけではなく、左右も対称なのですね。ちょっとこれでは思考実験には不適当です。
ここはひとつ、左右非対称になる様にカスタム化してしまいましょう。
具体的には、そうですね、左肩にトゲ付きシールドを装着して、右手にはヒートロッドを装備しましょう。こうすれば「ザクとは違うのだよ、ザクとは！」と言っても大丈夫（何が？）。ついでにモノアイも1個では不便（正確に前後対称にならない）なので、前と後ろに1個ずつ付けましょう（既に「モノ」アイではありませんが、御容赦ください）。

こうして作られた「前後対称だけれども左右非対称なカスタムゾック」の気持ちになってみましょう（どうしても無理なら「カスタムゾックに乗り込んだパイロットの気持ちになる」でも、まあ良いでしょう）。
さて、カスタムゾックになった貴方が、ゆっくりと目を開けると、目の前にもう一機のカスタムゾックが見えます。右手にヒートロッド、左肩にトゲ付きシールド・・・自分が右手を上げると、相手も右手を上げます。あたかも閲兵式の様に。
そう、貴方には、そのカスタムゾックが貴方に背中を向け、前方（貴方と同じ方向）を向いている様に見える筈です。何故なら、そう認識するのが最も自然だからです。
しかし、貴方が前面のモノアイを点滅させると、相手の後面のモノアイが点滅します。貴方が後面のモノアイを点滅させても、相手は何も反応しません。ここで初めて、貴方は相手が鏡に映った自分である事を知るのです。

この様に「そもそも最初から前後対称で左右非対称であるところの存在」の気持ちになりきれたとすれば、鏡に映った像を見ても、正しく「前後が反転した像」と認識し、左右が逆転した像だとは考えない事でしょう。
但し。
逆に、そうした存在であれば、自分の左右に置かれた鏡を見ても、頭の中で勝手に回転させて「前後が反転した鏡像」と認識してしまうのかもしれません。

という訳で、繰り返しになりますが、私としては「我々の体が左右対称で上下も前後も非対称であるが故に、鏡像を左右反転像と認識してしまう」のが結論になります。

５．謝辞

発端となったTogetterを作られた大’(satodainu)さん、まとめられた発言をなさった皆様、そして、まとめにコメントを寄せられた皆様に、御礼を申し上げます。お蔭様で、自分が過去に考えていた内容を形にする事が出来ました。

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