コミケを風疹から守り隊

2016年1月6日水曜日

消費税増税には非常に多くの問題点がある

初回公開日:2016年1月06日
最終更新日:2016年1月06日

1.はじめに

拙ブログでは、これまで経済、とりわけ消費税について幾つかの記事を書いてきました。
ちょっと一覧にしてみましょう(各タイトルには記事へのリンクを貼ってあります)。

素人談義:増税亡国論
消費税増税の光と闇
経済メモ:景気・金融・財政などの話(アベノミクスで景気は回復するか?)
消費税増税論者の嘘を撃つ
『消費税軽減税率の財務省案』はどこが酷いのか?(その1)
『消費税軽減税率の財務省案』はどこが酷いのか?(その2)

私がこれらの記事で一貫して主張しているのは
景気の調節は金融政策と財政政策で行う。景気回復の為には金融緩和と財政拡大の両方が必要
消費税増税は財政拡大とは正反対の政策なので反対
といった所です。
上記の記事でも個別に書いていたつもりではありましたが「消費税増税そのものの本質的な問題」については、かなり重要な論点だと思います。そこで、その点に着目して書いた記事があっても良いのではないかと考えました。ちょっと漢字ばかりの硬い文章になってしまって恐縮ですが、お読み頂ければ幸いです。



2.増税は景気への悪影響が強い

冒頭にリンクした以前の記事にも書きました様に、景気の調節は金融政策と財政政策の両面から行われるべきものです。ここで、極めて大雑把に言えば、金融政策とは「世の中に出回るお金の量を調節するもの」であり、財政政策とは「政府と国民の間でやり取りされるお金の量を調節するもの」です。そして、増税や減税は広義の財政政策に含まれます。つまり増税すれば国民から政府にお金が吸い上げられ、減税すれば政府から国民にお金が渡ります。
以上の説明から既に明らかだとは思いますが、景気が悪化している時には減税すべきであり、景気が過熱し過ぎている局面では増税すべきなのです。金融政策に関しては、我が国が(非常に遅くなったとはいえ)ようやくセオリー通りの金融緩和を行い始め、何とか長期不況から脱却しようとし始めたところです。にも関わらず、その矢先に増税したのみならず、更に再増税を強行しようとするのは、愚かとしか言い様がありません。
ところで、単純に「増税は景気にマイナス、減税は景気にプラス」とだけ言い切っても良いのでしょうか?例えば消費税を増税したとしても、一方で法人税や所得税を減税して、トータルでプラマイゼロになる様にすれば(喜ぶ人と悲しむ人の両方が出るものの)全体としては景気への影響も中立になる、と言えるのでしょうか。
いいえ、言えません。
これを説明するには「消費税の逆進性」の話をする必要があります。次項をお読み頂ければと思います。

3.消費税には逆進性がある

1)逆進性の歴史的変化
「逆進性」とは「低所得者ほど負担が大きくなる現象」の事です。当たり前ですが、お金持ちほどお金を持っています。つまり生活に余裕があります。なので昔の日本は「お金持ちほど余分に負担してもらおう」という考えでやってきました。それが最も端的に表れているのが「所得税の累進課税制」です。これは所得が増えれば(段階的に)税率が上がっていくものです。つまり所得が5千万円の人は、所得が5百万円の人の10倍税金を払う…だけではなくて、もっとたくさん払う、それが累進課税制です。また間接税に関しても、昔は「物品税」というものがありました。これは宝石や毛皮などの「贅沢品」に課税するもので、車でも軽乗用車の税金は安く、3ナンバーの税金は高く設定されていました(お気付きの方もいらっしゃると思いますが、こうした「贅沢品に課税」というのは軽減税率の考え方と通じる部分があります)。
しかし、こうした「多く持っている人に多く負担してもらおう」という考え方は少しずつ変化していきます。即ち、所得税の累進性は徐々に緩和され、物品税は消費税導入時に廃止されました。その結果、殆どの生活必需品に税金が掛けられる事になりました。つまり(相対的に言えば)より貧しい人がより多くの税金を負担する様な仕組みに変わっていったのです。その結果、現在では下記Tweetの如く「超富裕層の方がむしろ税負担『率』が少ない」という状況になってしまいました。
こうした方向に変化していった理由は幾つか考えられます。1つは高度経済成長により国民全体が豊かになっていった点です。その為「お金持ちだけではなくもっと多くの人に税金を負担してもらおう」という考えが出てきました。しかし、もしそれだけが理由だとすれば、景気が悪化した際には率先して貧しい人の負担が減らされなくてはならない筈ですが、御存知の通り現状では全くそうなっていません。
ですから、より大きな(しかしあまり表には出てこない)理由として推測できるのは「なるべく取りやすい所・取りっぱぐれの無い所から取る方向に変わってきた」というものです。元々、お金持ちと権力者との間には強い相関があります。「お金を持っている人ほど権力が強く、権力がある人の所ほどお金が集まるという傾向がある」のは直感的にも理解し易いでしょう。なので、政治というのはどうしても「金持ち優遇」の方向に向かいがちであり、だからこそ「民主主義」が大切なのです。

2)逆進性の問題点
この様に消費税には逆進性があります。これは勿論「公平性」という観点からも良くありません。もしも「貧しい人の方が相対的に負担が大きくなるという弱肉強食の傾向がどんどん強化される様な社会」を望むというなら話は別です。しかし、そういうのは中世的な考え方であり、21世紀の人類としてはそういう旧世代的な価値観を超越すべきではないでしょうか(←主語が超大きいけどお許しください)。
しかし問題は公平性だけではありません。純粋に景気回復という観点から見ても大問題なのです。何故なら、本当のお金持ちというのは、お金が余っていてもあまり使わないからです(この事は支出/収入の比率で見れば明らかです。また収入が多めだけど支出も多い、いわゆる「金遣いの荒い」人は真の金持ちよりもむしろ「成金」であり、そしてそういう人達はやがて没落していきます)。ですから景気(≒金回り)を良くする為には金持ちから金を吸い上げて貧しい人に配れば、全体として使われる量が増えます。そうして使われたお金は他の誰かの収入になりますので、その人も生活にゆとりが出来て、使うお金が増えます。使われたお金はまた別の誰かの収入になり…という風に金回り(≒景気)が良くなっていきます。ですから「再分配」という考え方は重要なのです。
という訳で、貧しい人から吸い上げて金持ちに配る様なやり方は逆効果であり、景気に冷水を浴びせるばかりです。なのに、政府と財務省がやっている事は、消費税を導入し何度も増税する一方で法人税と所得税を減税し続けている、まさに「逆効果そのもの」なのです。
以前にも引用したグラフを再掲しておきます。
という訳で、ここに消費税の大きな問題(の1つ)があります。

4.増税理由は嘘だらけ

1)「消費税増税は財政破綻を回避する為」という嘘
巷では「財政破綻の危険性」だの「財政再建待ったなし」みたいな話は、もぅ耳にタコが出来る程聞こえてきます。しかし、そもそも「財政破綻」とは一体どういう状態の事を言うのでしょうか。危険性を煽る人は一杯居ますが、具体的にどういう状態になるのかを教えてくれる人はなかなか居ません。それも道理で、もし具体的な話を始めてしまうと「そんな危険など存在しない」というのがバレてしまうからです。
勿体ぶっても仕方ないので、はっきり言いましょう。財政破綻が最も特徴的に現れる例として挙げられるのが「国債のデフォルト(債務不履行)」です。これは国債の元金もしくは利息が支払えなくなってしまう事です。つまり政府が自らの借金を返せない状態ですから、まさに「財政破綻」と呼ぶにふさわしい状態だと言えます。逆に言えば、国債のデフォルト(政府が借金を返せなくなる)の危険が無いのに「財政破綻の危険性」とか言い出すのは「アカラサマな危険煽り」とみなすべきでしょう。
では、ある国の国債がデフォルトする危険性をどう判断すれば良いのでしょうか。それを推測するのに良い指標は、その国の「長期金利」です。何故なら、デフォルトしそうな国の国債は誰でも敬遠しますから、買ってもらう為には高い金利を付けるしかなくなってしまうからであり、逆に皆が安心して買う国の国債は低い金利に抑えられるからです。
それでは実際に、こちらのHPで各国の長期金利を見比べてみましょう。2014年の時点でトップ3はロシア、南アフリカ、ギリシャといった「いかにもヤバそうな国々」です。いかにも危なそうなので、上述した通り、こうした国では国債の金利を高くしないと、なかなか買い手が付かないのです。逆に金利の低い方を見ると、ルクセンブルク、デンマーク、ドイツ、スイスなど「いかにも経済的に安定してそうな国々」が並んでいます。そして、こうした国々を押さえて、我が日本が堂々のトップです。
以上より明らかな事は「日本国債は世界で最もデフォルトし難い国債である」と(世界中がみなしていると)いう事、言い換えれば(少なくとも2014年のデータで見る限りでは)「日本は世界で最も財政破綻し難い国だと、世界中が判断している」という事なのです。
更に付け加えるならば、日本国国債は「その殆どが円建てである事」「殆どが国内で買われている事」「日本が国として通貨発行権を持っている事」そして「日本政府の資産は世界でもトップレベルである」の4点から「原理的にデフォルトを起こす危険性は極めて僅かである」と言えます。つまり「日本の国債は原理的に見てもデフォルトしないし、実際に市場の状況を見てもデフォルトしない」と言える訳です。この「原理と状況の両方から否定できる」というのは極めて強力な証拠だと考えています。ですから、現状で「財政破綻の危機」を煽るのは悪質なプロパガンダだと判断しているのです。
思い返してみれば、安倍総理が「消費税再増税の延期」を決定する少し前の時点では「増税を回避すれば国債の信認が失われ金利が急上昇してハイパーインフレが起きる」などと言っていた「政治家や有識者」が何人も居ました。これが妄言である事は昨年にもこちらの記事で書いています。またTwitterでも何度か取り上げていますので、こちら

や、こちら

から続く一連の呟きも御覧ください(日付の部分をクリックすると一連のTweetを読めます)。
本当はまだまだ「財政破綻論が嘘である証拠」はあります。例えば「政府債務(いわゆる国の借金は明治以降一貫して増大し続けており減少した時期の方がむしろ例外である」事とかですが、長くなりましたので今回はこの位にしておきます。

2)「消費税増税は社会保障費増大に対応する為」という嘘
社会保障費とは何か
社会保障費とは「医療・介護・福祉・年金」などの為に国や地方が出しているお金です。「少子高齢化による社会保障費の増大に対応する為に、景気に左右されない安定した財源である消費税の拡充が不可欠」みたいな意見を見た事のある方も多いと思います。
嘘です。
嘘だと解っていても、上記の様な文を書くと背中が痒くなったり胃が気持ち悪くなったりします。幾ら当て馬とはいえ、大間違いを書くのは気分が悪いし筆が汚れる様な気もします。
それはともかく「でも社会保障費が増大しているのは事実でしょう?」という御意見などもあると思いますので、もう少し説明を続けます。
社会保障費の対外比較とGDP比率
まず、日本の社会保障費は諸外国に比べて多いのでしょうか?こちらのページにデータと解説があります。確かに2003年から2011年の間に3割以上の増加傾向にあります。OECD加盟国の中では下位からようやく「中の上」レベルになってきたところです。これを「増加しているから大変だ」と思うかどうかです。
ところで、先程のグラフ、単位は何でしょうか?そう「%」ですね。つまり「対GDP比(GDPの何%を占めるかという事)」です。日本の社会保障費が増加している(様に見える)のは、金額自体の伸びもさる事ながら、GDPが伸びていない事も大きく影響しています。日本の名目GDPはここ20年以上全くと言って良い程、増えていません。もしもこの間、年4%の経済成長を達成できていたならば(これは比較的高い目標ではありますが、実現不可能なレベルではありません)なんと、社会保障費の増大なんて無かった事になってしまうのです!
勿論、私だって「経済成長が全ての問題を解決する」なんて能天気な事を言うつもりはありません。しかし「経済成長によって解決可能な問題が数多くある」のもまた、紛れも無い事実なのです。
抜本的な対策
それでも「やっぱり社会保障費の増大は心配」と思われる方も居るでしょう。では社会保障費の増大に最も大きく寄与している要素は何かと言えば、それはズバリ「高齢化」でしょう。高齢者が増えれば増えるほど医療費も介護費も増大していきます。しかし、だからといって医療費や介護費を絞るばかりでは(これはまさしく国が現在進行形で進めているところです)まるで「年寄りは死ね」と言うに等しい仕打ちです。そこで長期的に見て抜本的な改善を考えるとすれば(先に述べた経済成長は当然の前提として)人口構成比を変えるのが有効です。つまり「少子化対策」です。本来なら高齢化と少子化は別々の減少ですが、これが同時に進行している事が日本の状況を更に悪くしています。
しかし、国の少子化対策は全くおざなりです。今の社会状況で真剣に少子化対策をしようとすれば、どう考えても「女性が働きながら子を産み育てる」のを容易にする施策が不可欠です。しかし、その方面への政治的施策の動きは驚くほど鈍い。例えば、実際に子育てをしながら働こうとすると
保育園:現に働いていないと受け入れてもらえない。
企業:子供を預けていないと雇用しない。
となりがちなので、デッドロック(詰み)に陥ってしまいます。これはほんの一例であり、どうしても今の社会構造が「子供を産むな、育てるな」という方向に向いている様に思えてなりません。こうした状況を変えるには、政治の力によるのが最も有効な筈なのですが、なかなかその方向にはいかない。一方では負担ばかり増えていく。場当たり的な対策ではなく、もう少し本質をついた政治をやって欲しいと思います。
社会保障費は消費税で賄うべきか
そもそも論として、この点も大きな問題です。結論から言えば、既に述べた通り、逆進性の強い消費税を社会保障費に充てるのは筋違いです。こんな事をやっている国は(私の知る限り)他にありません。にも関わらず「社会保障費は消費税で」という論が大手を振ってまかり通っているのは、既に述べた通り「取り易い所・取りっぱぐれの無い所から取りたい」という考えによるものだと思えてなりません。
もしも、もしも本当に、そんなにも社会保障費が足りないのならば、消費税よりも先に増やすべきものがあるでしょう。例えば、サラリーマンなら給与明細を見て頂けば「社会保険料」として毎月結構な金額が天引きされている筈です。これには医療・介護・年金などが含まれています。確かにここの金額もじわじわと上がっていますが、消費税の増え方には到底及びません。しかも(前述の逆進性の話で引用したTweetのグラフをもう一度見て頂ければ解ります様に)この社会保険料はアカラサマに低所得者ほど負担率が高くなっています。つまり、既に貧しい人ほど社会保険料の負担率が高くなっているのに、その上に逆進性の強い消費税の負担を追加して、更に貧しい人から余分に搾り取ろうとしているのです。

あんたら、鬼ですか。

「社会保障の増大に対応」と言いながら、税と同様に徴収され社会保障に直接利用される「社会保険料」がさほど増額されず、その上、所得に応じた負担にもなっていないのは、何故なのでしょう?
もう、お解りですね。
そう「社会保障費に消費税を充てる」という言い訳が嘘だからです。

3)「消費税増税しなければ税収が不足する」という嘘
これは言い換えれば「減税には財源が必要という嘘」とも表現できます。「増税しなければ財源が不足する」「減税するには財源が必要」…特に財務省関係者が良く使うこれらの台詞は、厳密には間違いではないものの「限りなく嘘に近い詭弁」だと言って差し支えありません。何故なら、彼らの言う「足りる」「足りない」という言葉そのものの意味が極めて曖昧だからです。
私の感覚では「足りる」とは「収入>支出」であり「足りない」とは「収入<支出」の状態だと思います(国家予算の場合は「歳入」「歳出」という言葉を使いますが、基本的には同じ事です)。では日本国の場合、消費税増税をしなければ「歳入<歳出」の状態になってしまうのでしょうか?
いいえ、全然そんな事はありません。
まず、ここ数年間の傾向として「財務省の当初見積もりよりも税収が上回って」います。その額も概ね毎年2兆円前後と、巨額と言って良い金額です。軽減税率の議論で「4000億円しか財源が無い」とか言ってるのがバカバカしく聞こえる位です。これは財務省の見積もりが甘いというか渋過ぎるせいですが、わざと渋い見積もりをしていると思われる節もあります。何故なら、そうしておけば「お金が無いから予算も厳しいよ」と、各方面を牽制し操縦するのに都合が良いからです。
では、本当にお金が足りなかったら(収入<支出だったら)どうするのでしょうか。
その場合は、国債を発行します。つまり借金をするという事ですね。「ほら見ろ、やっぱり借金をするんじゃないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと待ってください。上記1)でも述べた通り、日本国債の信用度は世界一です。少しくらい借金が増えたところで大した問題ではありません。景気を回復させて経済成長をさせられれば(国だけではなく企業も個人も)借金を返すのが楽になります。逆に言えば、日本は長年に渡るデフレ不況に陥っているからこそ「国の借金が増えて大変だ~」みたいな言い分が幅をきかせてきたとも言えます。
未だに「財政規律が緩むとハイパーインフレ~」みたいな事(例えば2016年1月2日TBS「時事放談」での石破茂氏の発言)を言う人も居ますが、そんなの「調節」とか「程度」とかを知らない(あるいは故意に無視している)「危険煽り」です。例えるなら、お風呂に入っていてどんどんお湯が冷めてきて水になってしまったので「冷たい、風邪ひく、追い焚きしたい」と言ったら「何言ってるんだ!ちょっとでも温めたら沸騰して大火傷して死んじゃうだろバカ!!」なんていうのと同じくらい愚かな主張です。
もっと端的に「財源論」のバカバカしさを述べるなら、例えば「法人税減税」の際には財源が殆ど問題にされていません。これ一つとっても、税を取る側の都合で考え出された屁理屈だという事が窺えます。

5.海外との違い

1)海外の消費税は高い?
「海外ではもっと高い消費税を負担している」と主張する人が居ます。これは表面的にはまぁ正しいとも言えますが、はっきり言えば「都合の良い部分だけを切り取って見せている」に過ぎません。以下で述べる様に、軽減税率との関係・社会保障費や他の税との関係等を考慮に入れない限り、単に消費税率だけを比べて「海外は高い・日本は安い」などと言い張ってもダメです。
とはいえ、税率だけを見ると海外の方が高いのも確かです。
そこで私見ながらひとつ指摘しておきます。海外(特に欧米)では所得税や法人税よりも消費税への依存度が高い傾向にあるのは「人の移動が起こり易い」からではないかと推測しています。欧米は基本的に陸続きであり英仏海峡も泳いで渡る人が居るくらいです。また米国も元々は移民が作った国ですから、日本に比べれば国家間の人の移動は盛んな筈です。こうした状況下で、金持ちに高い所得税を掛ければ簡単に他の国へ逃げてしまうでしょう。また受け入れる国も、資産を持って移動してくる金持ちは歓迎する筈です。例えば超富裕層が多く住んでいるモナコ公国には所得税がありません。ゼロです。一方で物価は高く、また消費税に関しては隣国のフランスと同様です。
という訳で「資産や所得に課税するよりも、消費に課税する」という傾向が強くなってきたのではないか、そんな風に考えています。

2)海外での軽減税率は?
軽減税率に関しても、生活必需品は無税、もしくは最悪でも半分以下の税率です。日本の様な「なんちゃって軽減税率」を導入している国など聞いた事がありません。
具体的には、以下のTweetが解り易いでしょう。
日本の「軽減税率と称するもの」が如何に「形だけ」なのかが、お解り頂けると思います。

3)社会保障費と税の関係は?
既に述べた通り、日本以外に「社会保障費を消費税で賄う」などとしている国はありません。そんな馬鹿げた主張をすれば、非難轟々になるのは間違いないでしょう。
また財務省などは「日本の負担率は他の先進国より低い」などとまことしやかに言いますが、ここには重要な視点が(おそらく意図的に)欠けています。それは「負担したお金のうちどれだけが実際に使われて(還元されて)いるのか」です。いくら「日本は負担率が低い(だからもっと負担しろ)」と力んだところで、搾り取ったお金のごく一部しか社会保障に回さないのであれば、まるでインチキです。
では、実際にどうなっているのか、そのデータがこちらにあります。日本は確かに負担率は低いですが還元率も低い。更に還元/負担の割合すら低めになっています。もしも本当に「社会保障費が足りなくて足りなくて困っている」のであれば、なけなしのお金をはじから社会保障に注ぎ込んでいる状態の筈です。しかし実際には殆ど逆です。我々が払った税金や社会保険料は、諸外国に比べ、それほど実際の社会保障には回っていないと言って良いでしょう。

6.おわりに

世の中には、自分の主張を通す為に嘘・屁理屈・データの捻じ曲げや隠蔽を行う人達が居ます。それは様々な分野にみられますが、中でも典型的なのは「危険を過度に煽る」行為です。
そういった行為は役に立たないばかりでなく、既に存在する被害から目をそらす効果すらあります。
例えば、
「財政破綻やハイパーインフレの危険を過度に煽る行為」は、実際の貧困状態にある人々の苦しみを軽視します。
「放射線の低線量被曝の危険を過度に煽る行為」は、被災者の方々の苦しみを軽視します。
「ワクチンの副反応の危険を過度に煽る行為」は、ワクチンによって予防できた筈の病気になっている人々の苦しみを軽視します。

「一体どの主張が正しいのか」を見極めるのは、しばしば非常に困難です。
万能の解決策はありません。あれば苦労しません。
でも、幾つかの目安なら、あります。
「過度に感情を煽っていない事」「客観的な(確認可能な)データを示している事」「理屈が通っている(自己矛盾を起こしていない)事」などです。

この記事が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

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