(タイトル変更・本文追記しました)
これは、もう「Web論座問題」と呼んでも良いレベルですね。
何の事か解らない方は、とりあえずこちらのまとめを関連リンクと共に読んで頂ければ、大体の流れは掴めると思います。ただ、それすら面倒臭いという方もいらっしゃるかもしれませんので、そういうワガママさんの為に、今北産業(本当は10行以上あるけれど)的に、以下にまとめました。
1.Web論座にスイスでのホメオパシー事情を伝える記事が載った(執筆者は外部の人)
2.その記事中に「ホメオパシーがADHDに効果的だという実験結果がある」という記載がある
3.その他にも「スイスでは牛にもホメオパシーが使われている」「筆者自身が効果を実感している」という記載もある
4.上記2.の記載は明らかに事実誤認である。詳しくはこちらの記事を読んで頂くとして、結論から言えば、ホメオパシーがADHDに効くとは言えない。
5.上記3.の点についても異論は多いが、少なくともADHDの件に関しては明らかに事実とは異なっているので、何人もの人がWeb論座に対応を求めた。
6.但し、対応といっても、必ずしも元記事の削除とか謝罪とかを求めているのではない(ここ重要。Togetterのコメント欄にも、ここの部分が解ってない為にトンチンカンな事を言っている人がいる)。こっそり削除して無かった事にされるのも嫌だし。あくまで「記事中に事実と異なる部分がある」という情報を提供して欲しいという事。具体的には、欄外に編集部の注釈を入れるとか、カウンター情報へのリンクを貼ったりする、といった対応を求めている。
8.これは推測だが、どうもWeb論座的には、7.の記事を載せた事で対応が済んだと思ってるっぽい。その後いくら突付いても応答が無く、先日ちょっと搦め手まで使ってようやく引き出した反応が、上記のToggetter(つまり、事実上のゼロ回答)であった(2011/2/9時点)。
さて、こうやって見てみると、確かに7.で対応しているではないか、という意見もあるでしょう。カウンター情報も提示しているではないかと。
しかし、ここで重要なポイントは「たまたま1.の記事を読んだ人が7.のカウンター情報に触れる確率はかなり低い」という点です。元記事はそれだけで完結しており、その記事だけを読んだ人が「へー、ホメオパシーってADHDに有効なんだ」と思い込んでしまう危険性は、未だに充分にあると言えるでしょう(何てったって、天下の朝日新聞社の記事ですからねぇ)。
そこを何よりも問題にしているのに、もしかしたら批判している意図が全く伝わっていないのかしら、とも思ってしまいます。
はっきりとした事実誤認の内容が含まれている記事を載せておいて「多様な意見」だの「両論併記」だのと言っても、全く説得力がないので、逃げにしか見えません。
それでも、どうしてもお得意の「両論併記」の話に矮小化させたいと仰るのなら、せめて、最低限出来る事として「リンクを貼って欲しい」と言っている訳です。元記事と同じページに、カウンター情報へのアクセス方法を置いて欲しいと。
明らかに事実と異なる内容が記載されている記事に対して、その程度の対応すら出来ないのであれば「編集部の存在意義って何?Web論座って媒体は、単なる記事の入れ物に過ぎないの?」などと思ってしまう訳です。
それでも「ダメ記事は読まなきゃいい」とか「Web論座は元々玉石混交」という意見を仰る方もいらっしゃいます。でも私は、そういう「リテラシーのある」方々の事は、あまり心配していないのです。あの記事一本だけを読んで「朝日新聞社が配信している記事だから信用できるだろう」と信じてしまう人の事を心配しているのです。
Web論座の中の人は「何かあったら対応する」と仰ってますが、「何か」って何でしょう?「Web論座の記事を読んでADHDにホメオパシーが効果的だと信じて試したが無駄だった。Web論座は損害賠償しろ」と訴えられるとか、そういう事?「何も起きてない様に見える限り、何の対処もしない」って事なの?
何か起きてからでは遅いでしょう。普段そういう事を最も声高に主張しているのがジャーナリズムなのではないですか。ダブスタも大概にして欲しいものです。
まぁ確かに「学研だって『ムー』を出してるんだから((C)菊池誠)」という考え方もあるでしょう。しかしいくらなんでも「ムー」は一見してオカルト雑誌だって解るでしょう。Web論座は一見するとマトモに見える分「ムー」よりタチが悪いとも言えます。看板に合わせた内容を整えるか、内容に見合った体裁にするか、どちらかに統一して欲しいものですね。
ついでだから、今更ですが、ここにもはっきりと書いておきましょう。
ホメオパシーは、ADHDには効きません。
ホメオパシーは、癌にも効きません。
ホメオパシーは、その他あらゆる病気に効きません。
ホメオパシーの唯一の効果は「気休めになる」という点だけです。
ホメオパシーで治った様に思えるのは、たまたま良くなる時期に一致して使ったか、あるいは「病は気から」であったと考えられます。
あなたが気休めだと自覚したうえでホメオパシーを使うのは自由です。好きにすればいい。でもこれだけは言っておきます。ホメオパシーは医療の代替にはなりません。本物の医療が必要な場合にまでホメオパシーで誤魔化すのは、絶対に止めた方がいいですよ。
ただ、今回の事で怪我の功名と言えるのは、ホメオパシーとADHDに対するカウンター情報がWebに増えた事でしょう。「ホメオパシー ADHD」でググると、ホメオパシーの胡散臭い宣伝に混じって、今回の問題をきっかけに書かれたと思われる記事が何件かヒットします。これが本当に唯一の救いと言えるかもしれません。
(2011/3/31追記)
正確な日時は定かではないのですが、どうも2月の終わり頃に、当該記事の末尾に、「WEBRONZAの主な関連記事」へのリンクが追加されていた模様です。この関連記事には上記7.で書いたカウンター情報も含まれています。これで最低限、私が上で述べた「元記事と同じページに、カウンター情報へのアクセス方法を置いて欲しい」という希望は満たされました。
その点は評価します。
しかし、勿論大いに不満もあります。
まず、余りにも対応が後手に回り過ぎた点。リンクを追加する(しかも他所ではなくWeb論座内の記事へのリンクです)だけの事に、何故これほどまでに時間が掛かったのか。別件ながら先日、震災後の東京ディズニーリゾートの再開時期に関する指摘に対しては、その日のうちに記事の修正を行なっていました。実に迅速です。個人的には、朝日新聞の記事との矛盾を指摘されたから、直ちに修正したのではないかと邪推しています。
次に、対応した事についてアナウンスが無かった点。いちいち断れとは言いませんが、何と言いますか、こっそり修正して口を拭っているという印象が否めません。
最後に、対応して頂いたのは確かですが、これは本当に「最低限の対応」でしかないという点です。編集部としてはこれで幕引きのつもりかもしれませんが、私から見れば、Web論座というメディアの信頼性が低下しただけの結果に終わりました。
今回の件やその後の別件等への対応も含め「Web論座とは、その程度のメディアである」という認識を強くしましたので、今後は私も生暖かく見守っていきたいと思います。
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